四国ツーリング2日目
知らない天井だ。
朝7時前。
ネカフェで目を覚ますのは何度目だろうか。
あまり熟睡できてはいないけど、旅の高揚感が眠気を紛らわせてくれる。
受付でチェックアウトを済ませ、外に出ると快晴であった。
うむ、今日も良き旅になりそうだ。
輪行バッグに詰め込んでいた自転車を手早く組み立てた後、吉野家で朝食をサッと済ませてこの日のプランを確認する。
まず、レンタカーを借りるのは昼の11時半から。
なので午前中は新居浜市周辺で時間を潰す必要があるが、果たして新居浜市に時間を潰せる場所があるのだろうか。
正直、今のところ新居浜市はなんの変哲もないただの地方都市の印象しかない。
こんなときに頼りになるのが、旅人の強い味方であるところのツーリングマップル。
このツーリングマップル、ツーリングに最適な縮尺で見やすいだけでなく、バイク乗りである編集者が自ら集めたおすすめスポットや道路情報が地図上に載っているので、旅の道中では下手にスマホで情報を集めるよりも手っ取り早い。
さて、何か良いスポットは無いか現在地周辺のページを開いてみると、ふとあるスポットが目に留まった。
「マイントピア別子」
情報によると道の駅として機能してるだけではなく、別子銅山に関する展示館も併設されてるらしい。
別子銅山、確か日本史の教科書だか資料集だかでチラッとその名を見たことはある気がする。
明治以降、日本の近代化を象徴する産業遺産の1つとしてよく名の挙がる場所ぐらいの予備知識しかなかったけど、行ってみる価値はありそうだ。
マイントピア別子の場所は新居浜の市街地から数キロほど内陸に入った場所にあるため、必然的に登る必要がある。
だが膝の調子は昨日ほど悪くはなさそう。
軽めのギアでくるくる回していけば多少の登りはこなせそうだが、長距離になると痛みそうであった。
この日を走らないことにしたのはやはり正解であった。
そして着きましたマイントピア別子。体感的にそんな登った感じはしなかったが、何だかんだ標高3〜400mまで登ってたらしい。
パワーストン()
そしてここ新居浜市、なんとあの声優の水樹奈々さんの出身地だった件。
どうやら新居浜市の観光大使も務められてるらしく、水樹奈々さんが館内のナレーションの声を担当してるらしい。
まぁぶっちゃけ水樹奈々さんが演じてるの、ナルトのヒナタとか青空レストランのナレーションぐらいしかぱっと思い浮かばないんだけど、それでも聞き覚えのある声がミュージアムのナレーションを喋ってるというのは新鮮だった。
以下写真にて簡潔に
昔、鉱山を走ってたという山岳鉄道を再現したミニSL。これで坑道内展示館の入り口まで移動できる。
そしてこのミニSLでも水樹奈々さんのナレーション付きという徹底ぶり。
男の子だからこういうの、いくつになってもワクワクしちゃう。
NIPPONの労働ってかんじ
男の子だからこういうのワクワクしちゃうその2(地下1000mはどういう所なのかは行ってのお楽しみ)
坑夫って大変だなと思いました(KONAMI)
肝心の展示の内容は、期待しすぎちゃいけないけど、行ったら行ったでそれなりには楽しめるかなという程度。ただ、入館料が大人1500円くらい取られて正直高いなって印象が拭えなかった。
しかし、ここに来る観光客はどうやらマイントピア別子よりさらに上にある東平(とうなる)という場所もセットで行くみたいだ。
なんでも日本のマチュピチュとも呼ばれてるそうで中々面白そうではあったが、そこら辺にいたおっちゃん曰く
おっちゃん「あそこでこの前自転車が崖から落ちたでねぇ、自転車で行くのは辞めとけ〜」
僕「マジすか」
とのことなので見送りに。決して膝が痛いからではないゾ。戦略的撤退だ。
さて、良い時間になってきたのでマイントピア別子を後にして再び市街地に戻り、新しい旅の共をお迎えにあがる。
「おっでーは『ヴィッツ』を仲間に加えた」
やれやれ、自転車旅とは何だったのかと言いたいところだが仕方ないね、いくら道中が楽しくても目的地に着かなきゃしょうがない。
というわけでトヨタレンタリースで手続きをさっさと済ませ、後部座席に自転車と荷物をぶち込んでいざ四国カルストへ!
海沿いの新居浜市から一気に内陸部へと向かうと、お店どころか民家もあまり無い山道の中をひたすらアップダウンが続く。ときどき思い出したように道の駅があったり、時代劇で見る峠の茶屋みたいな萎びた風情の飲食店が点在する程度。
つむりさんのブログから、ハンガーノックになりそうなくらい四国の山道は何も無いのは知ってたけどここまで人気がないとは。
昼飯がまだだったので「やっぱ新居浜で昼食を済ませておくべきだったな〜」と思い始めたところに、これまた風情のある茶屋が。
車を停め、中に入ると昼飯に丁度良さそうなメニューが一通り揃ってるようだったのでここで昼飯を頂くことにする。
やっぱりここでもうどん食べちゃうよね。四国だし。
ついでにおでんも。自転車漕いでないから軽めに。
そして四国の山道を走っててなにが印象深かったかって、とにかく川が綺麗なこと。
とにかく見てくれこの綺麗さを。
四国の清流といえば四万十川をとにかく連想するけど、名前も無さそうな川ですら思わず車を止めて見入ってしまうくらい、見事なエメラルドブルー。
夏なら迷わずルパンダイブしてる。
しばらく車を走らせると、四国カルストが近づいてきた。
ああ、高まる。
自転車と言う手段を捨ててまで見たかった四国カルストの地。
この先どんな絶景が待ち受けているのか。
おっと、通行止め。即座に迂回して別の道を行く。
ここまでも結構なアップダウンが続いてきたが、四国カルストが近づいてくるにつれ、さらに傾斜が急になる。
もし自転車で来てたら、ここに来てのこの傾斜はなかなか堪えるものだったろう。
車ってば便利←
そして私、普段は親父のプリウスしか運転してないもんだからヴィッツの運転の軽快さにビックリ。
四国の山もスイスイ走れるし、オマケに燃費も良い。
さすがトヨタですは。
そんなこと考えながらコーナーをブンブン飛ばしてると、視界が開けた。
うひょー!着いた着いた、ここが四国カルスト!
天気は微妙だったけどここだけ別世界というか、日本じゃないみたい。ここまでも大概な山道だったけど本当に一気に世界が変わったみたい。
何というかこう、最果て感がパない(語彙不足)
この四国カルストを始めとしたカルスト地形は、石灰岩などの水に溶けやすい岩が長い年月をかけて侵食された結果できた地形らしい。
高校の修学旅行で秋吉台に行ったことがあるが、雰囲気はそっくり。
当時は「ただのデコボコな原っぱやんけ」としか思わなかったけど、あれから自転車という趣味に出会い、旅を重ねて色んなものを見てきた今の自分には間違いなく絶景だと言えた。
今回は思いがけず車での来訪になったけど、せっかくなので自転車を降ろしてしばし一人撮影会に興じることにする。
分かる
愛車は最高のモニュメント
どこまでも走っていけそうだ(膝痛いけど)
さて、一通り撮影会を楽しんだところで宿に向かう。
今日はこの旅で唯一予約した宿、「高原ふれあいの家 天狗荘」に泊まる。
台地の上にある宿なので、満点の星空を堪能したかったが生憎の曇りだった…。
まぁこればっかりはしょうがない。
さて、旅先での楽しみがご当地グルメもそうだけどお酒!
宿の方にオススメされた高知のお酒、土佐鶴。
辛口でスッキリタイプと、僕の好みにピッタリ。酒がすすむもんだからコースの料理では物足りず、地鶏の唐揚げも追加注文。
部屋に戻る頃にはいい感じに酔ってしまった。
酔に任せて思いっきり布団に寝っ転がると、その日1日が頭の中で蘇る。何と幸せだろう。
そういえば明日は平日だっけ。旅の真っ只中だと、曜日感覚というものがすっかり無くなる。
学生のときのような旅はもうできない訳だけど、このように社会人として限られた時間を思いっ切り楽しむのも悪くない。
あぁ、楽しい。
旅先での夜は、こうして更けていった。
続く